伝説のディーバが挑んだポエトリーリーディングの世界
カルメン・マキがポエトリーリーディングに挑む。どこまでも美しく透きとおり、絡みあい睦みあう、言葉と音……即興演奏にのせて紡ぎだされる、カルメン・マキの深く慈愛に満ちた声。
中原中也、萩原朔太郎、高村光太郎……詩は聴いてこそ、を実感できるポエトリーリーディング集。
水城雄の美しい即興演奏とカルメン・マキの深く豊かな声が重なり合って、朗読とも音楽ともつかぬ味わい。何度聴いても新しい発見に心がふるえます……。
1969年、「時には母のない子のように」で17歳の鮮烈なデビューを飾ったカルメン・マキ。その後、カルメン・マキ&OZなどの活動を通じて日本のロックシーンを切り拓き、後の世代のミュージシャンたちに多大な影響を及ぼしてきたことを知る人も多いことでしょう。
現在はメジャーレーベルに所属せず、ライブを中心とする独自の活動を展開、この数年は板橋文夫らジャズプレイヤーとのステージが中心となっています。
今なお第一線のディーバであるカルメン・マキが、水城ゆうとの交友から、かねてから期していた朗読に挑戦。やがて生まれたのが、小説家・音楽家、またNPO法人現代朗読協会の朗読演出家である水城雄(みずき・ゆう)とのコラボレーションアルバム、詩曲集「白い月」です。
水城雄の美しい即興演奏とカルメン・マキの深く豊かな声が重なり合って織り上げていくコンテンポラリーなセッションは、朗読とも音楽ともつかぬ味わいで、聴くたびに発見があります。
収録テキストは、萩原朔太郎「白い月」、中原中也「骨」「詩人はつらい」、高村光太郎「人に」のほか、水城雄の散文詩的な掌編を含む、全11作品です。
収録作品
- 「A Red Flower」(水城雄)
- 「白い月」(萩原朔太郎)
- 「骨」(中原中也)
- 「詩人はつらい」(中原中也)
- 「眠らない男」(水城雄)
- 「恋を恋する人」(萩原朔太郎)
- 「人に」(高村光太郎)
- 「北の海」(中原中也)
- 「祈り」(水城雄)
- 「月夜の浜辺」(中原中也)
- 「Bird Song」
ライナーノートより 「すべては詩から始まった」 by 水城雄
歌は詩から生まれ、また詩からは物語も生まれた。
詩と歌と物語がたがいに分かたれることなく、ともにまじりあって存在していた時代がかつてあった。はるか時を経て、私たちはまるで昆虫学者のように、ものごとをさまざまに細かく分類し、ラベルを貼る作業に熱中している。詩と音楽はまるで別物のように扱われ、音楽もまた数えきれないほどジャンル分けされ、細分化している。世界の国々が何百と国境を設定し、たがいの民族名と宗派を主張し合っているみたいに。
でも、私たちは標本箱の仕切りに――国境線のなかに――押しこめられたくはない。
最近のマキさんは、固定メンバーを持つことなく、さまざまな人とライブをおこなっている。歌われる曲もいろいろなジャンルだし、アレンジだってそのつど変わっていく。もはやジャンルを特定することはできない。共演メンバーもノンジャンルとしかいいようのない柔軟な音楽性を持つ人ばかりだ。
マキさんは歌のあいだに、ときおり短いトーク(いわゆるMCというやつだ)をはさむ。それはまるで詩のようであり、曲と曲をつなぐ織糸のような役目をはたしている。また、はっきりと詩を読むこともある。詩は音楽と違和感なくまじりあい(あるいはときに違和感を狙って繰りだされ)、また音楽そのものであるようにも聞こえる。
それを聞いたとき、私はマキさんに「詩だけのアルバム」を作ってみては、と提案したのだ。それも音楽アルバムとして。
音楽としてのカルメンマキのポエトリー・リーディング。ありうると思う。実際、このアルバムにおさめられている「曲」を聞いて、これを詩だと感じるだろうか。それとも音楽だと感じるだろうか。
それだって、どちらでもいいことではある。あなたのなかのどこかにカルメンマキの響きがとどけばいいのだ。
カルメン・マキ&水城ゆう 詩曲集「白い月」 萩原朔太郎「白い月」、中原中也「骨」「詩人はつらい」、高村光太郎「人に」のほか、水城雄の散文詩的な掌編を含む全11作品を収録。 ■朗読:カルメン・マキ/音楽・演奏:水城ゆう ■税込価格:2,160円 |
アーティスト プロフィール
カルメン・マキ(朗読)
寺山修司の劇団「天井桟敷」から17歳で歌手デビュー。デビュー曲「時には母のない子のように」で紅白出場。その後ロックに転じ、その力強い日本人離れした歌唱で日本ロック界の草分け的存在に。
水城ゆう(ピアノ)
小説家、音楽家、朗読演出家。ジャズピアニストを経て、現在は現代音楽的な即興演奏家、作曲家としてさまざまなジャンルのアーティストと共演。